こんにちわ!しもステ記者 しー子です!
全国屈指の高度医療の集積が進んだ「自治医科大学附属病院」を取材してきました!
今回は病院長 佐田尚宏院長先生に単独インタビューしています!ドキドキしましたが、たくさん貴重なお話を伺うことができました!
ありがとうがとうございました!
病院長 佐田尚宏先生
出身地 | 滋賀県 |
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卒業大学 | 東京大学 |
専門分野 | 胆膵外科、内視鏡外科 |
趣味 | ゴルフ |
愛読書 | 歴史・科学などの本が好き。 最近では主にホモサピエンスはどのように進化したのか等、人間の進化に関する本や、その他多方面の本を読む。 |
好きな映画 | 近未来SF的なもの「スターウォーズ」「ブレードランナー」等 |
尊敬する人 | 野球の指導者でいいと思うのは、ボビー・バレンタイン。選手を怒らず、ネガティブなことを言わないことが良い。 |
医師の道を志したきっかけと経緯をお聞かせください。
基本的に人を相手にした仕事をしたかったのと、自分の中でスキルを身につけられる仕事がしたかったというのがあり、その中で医師になるということが魅力的だったんです。
特に両親が医者だったというわけではなく、父親はサラリーマンだったのですが、大学を選ぶにあたって直接仕事に直結しているのが医学部かなと思い、そういった点で目標をもって勉強ができるのではないかと思いました。
ただ、以前はそう思っていましたが、学生時代は将来のことについてフォーカスを当てて勉強をするだけでは十分ではないと思っています。やはり、勉強だけではなく、ほかの事も十分にやった方がいいなと思います。結果的にはいろいろやっていたので、その経過の中でそう思いました。医療をするにあたって、医療以外の勉強はとても役に立ちます。最近は、若い人たちには『ぜひ医学以外の事も一生懸命やりなさい』と言っています。
私は消化器系外科医なのですが、基本的には医者の仕事は患者さんと話をすることが一番重要で、実際に勤務時間の中で手術をしている時間はそれほど長くなくて、患者さんと話をしたり説明をしたりする時間の方が長いんです。患者さんと十分に話をして、信頼関係を作っていくことがとても大切です。
最初はスキルをつけることが目標でしたが、実際はそういうことが重要なのだと思いました。病気の説明というのは、いい話だけではなく悪い話もしなければならないので、そういう話もできる関係になることが大事だと考えています。
外科医というと、手術というイメージですが・・・
ドラマなどでは相当時間もかかりますし、集中力も維持しなければいけない、相当しんどくて厳しいお仕事だと思うのですが、体力的な部分、精神的な部分はどうしているのでしょうか?
私は消化器の中でも膵臓外科を専門としていまして、6~7時間手術することもあります。若いころはできるのですが、やはり40~50代を過ぎると体力も落ちてくるわけです。日常的なトレーニングもしていますが、今は手術を一人でやる時代ではなく、外科の医療はチーム医療という考え方になっています。1人突出した人がいても成績は良くならない、最高の結果は出ないのです。チーム全体のスキルを上げていくことが重要だと考えています。
自治医大に着任して19年目になりますが、そういう考え方でやってきました。臨床成績は他の施設に比べてもいい成績を出せています。手術死亡をゼロにするのももちろんですが、手術の合併症もゼロにしたい、そのためにはいろんな努力をしなければならないのですが、それをチームとしてやっているというのが外科の考え方です。長い手術も、誰がやっても同じような手術になるように、チームの中でスキルを共有して、意識を共有してやっていくことが重要と考えています。
そうなんですね。では指導などもしっかりやっていかないと難しいですよね。
自治医大から派遣している病院も多いのですが、派遣した病院でも同じ結果が出ないといけないんです。10か所に派遣した2~30人くらいのドクターが同じ手術ができるようにトレーニングするように指導しています。例えば、若手を2年派遣したら1年大学に戻るなど、派遣されている若手は大学に戻ってきた時に考え方などを身につけて、また派遣先に出るという感じです。
先生のご専門の肝胆膵(肝臓、胆道、膵臓)というのは、我々にとってはあまりなじみがない部分ですが・・・
病気としては多い部分ですよ。2年前に女性のがんの死亡原因で、胃がんを抜いて膵臓がんが3位になりました。胃がんより多くなったというのは我々にとってすごいインパクトでした。
病院の院長という立場について
医師という立場と、基本は変わらないかも知れませんが、物の見方など何か変わらないといけない部分もあると思いますが、そのあたりはどうでしょうか?
発想は基本的には同じですが、現場で医療をやりやすくするのが院長の仕事だと思っています。ここ3年くらい、とにかく断らない親切な医療をしていこうという話をしています。
10年位前に救急の患者さんがかなり増えて病院全体が疲労していた時期があったんです。
当時年間3万5千人くらいの救急の患者さんが来ていて、それがかなり負担だったんです。
小山地区や芳賀地区にも救急診療所を作っていただいて、軽症の患者さんはそちらでまず診ていただくというしくみを作り、昨年度で1万5千人まで減りました。約1/3ですね。その分重症の患者さんの割合が増えて、高度救命救急センターという状況には合うような状態にはなってきました。
やはり、患者さんを減らすときに、自治医大で診なくてもいいじゃないかとか、ほかの病院に行った方がいいんじゃないかという話がよく出たんですが、地域の病院や行政でも努力してもらって、結果メディカルコントロールができた中で、自治医大に紹介していただいた患者さんを断ってはいけないという意図でみなさんにお話をしています。また、2年前に患者サポートセンターを作り、日中の紹介の窓口を一本化して、受け入れやすい体制を整えて、紹介の患者さんが受診しやすいようにするのが、ここ数年力を入れてきたことです。
自治医大はいわゆる大学附属病院で、特定機能病院ですので、地域の基幹病院というよりはもっと広い範囲で、いわゆる高度急性期、急性期の医療をやろうというのが、ある程度社会的な要望になります。それに加えて、我々は下野市にある病院なので地域医療をしっかりと下支えをしていきたいと思っています。
我々は実際に、前面に立って地域医療をやる役割では多分ないと思うんです。やはり、地域医療構想の中で、機能分担ということがひとつの大きなテーマなので。しかし、機能分担がされる中で、誰かが機能を下支えしないとシステムが持たない、それができるのがやはり自治医大だけなので、いわゆる大学病院としての本来の仕事だけではなく、地域医療を下支えすることを一つのテーマとしてやっています。これは私が外科の臨床の第一線でやっていた頃から、やりたいと思っていたことでした。
病院の診療方針についてお聞かせください!
先ほどお話ししたような、高度急性期・急性期医療をしっかりやって、その上で地域医療を下支えする、地域医療を考える病院というのが診療方針です。栃木県、下野市の地域医療を考えていきたいです。
今後取り組みたいことは?
今非常に大きな問題意識を持っているのは栃木県の医師数についてです。栃木県の医師数は全国的には少なく、人口10万に対して全国平均240人のところ、栃木は218人くらいなんです。将来の医療体制を考えるにあたって、医師数というのは非常に重要で、いかに医師数を増やすか、他の医療機関の方々と相談をしていきたいと思っています。
地域医療構想の議論が始まって、それぞれの県でどれくらいの医療資源があって、将来どれくらいの医療をしていかなければならないのかがわかるようになり、それに沿って計画を立てているわけです。今後増えていく患者に対し、供給出来る医療の量を増やさなきゃいけない。特にがん治療の中でいかに成績をよくするかが重要です。前に比べればよくなっていますが、それでもがんで亡くなられる方というのは年間何十万人といます。いかに改善していくかが課題となっています。一般的に医療は患者数や医師数など量で語られることが多いのですが、やはり我々にとって大事なのは質であって、いかに良質な医療を提供できるかが大きなテーマだと考えます。
ホームページに「普通の人が普通にできる外科診療を目標にしている」とありましたが、どういう意味ですか?
昔は外科医たるもの24時間365日、外科医であれと教えられていましたが、そういうことが出来る人はごく一部の人で、普通の人が普通に働ける、ライフサイクルに合わせて仕事ができる、それでもいい結果が出せることが大事だと考えています。1人のスーパーマンがいるのではなく、チームとして診療をする、普通の人が普通に働いて、普通に休みもとるし、普通に生活をすることができつつ、最高の成績を出すことを目指すということです。
外科医は40年くらい勤務しますから、40年のスパンでいろんな時期があるわけです。色々な人が色々な働き方をして外科の医局としての水準を保つマネジメントをしたいと思っています。外科の医局が一番大きな医局なので、いろいろな改善の試みをまず外科の医局でやるんです。いろんなことを議論してもらって今まで変えてきました。外科医が一番勤務時間が長いのでそれをいかに短くするかが課題です。
自治医大の中ではいわゆる働き方の多様性ということを重要視します。働き方のダイバーシティですね。そして、もう一つ、考え方のダイバーシティという話をよくしています。一つの考え方で医療をするのではなく、やはりプロの集団ですから、1人1人の考え方を実現していくということが、全体の成長につながるんです。いろんな考え方を許容する、そういう組織が理想ですね。
我々が考えなきゃいけないことは結果だけなんです。どんなにいい考え方で治療しても結果が悪いとだめなんです。とにかくいい結果を出すために考える。いろんな考え方があるし、いろんなやり方があるのでそれらを許容することが大事で、その上で最高の結果を出しましょういう考え方です。
先生の著書で、「あなたのクリニカルパスは安全ですか?」という本がありますが、クリニカルパスとはなんですか?
安全に医療を提供するための手段についての医療者の考え方で、治療については患者さんが十分理解することが重要で、それを実現するためのツールです。外科医療というのはある程度リスクもあることも説明しなければならないんですよね。いいことばかりではなく、やっぱりつらいこともあるんです。痛かったり苦しかったり・・・そういうことも理解していただくことがとても大事なんです。
下野市の皆さんに何かお話しておきたいことなどはありますか?
最近下野市の方々によくお話ししているのは、「下野市と共にあゆむ自治医大を目指す」ということです。下野市にお世話になることも多いので、地元への還元をやっていかなければならないことと思っています。
2025年問題というのをインターネットで見たのですが、どういうものなのですか?
団塊の世代の方が、すべて後期高齢者になる2025年に向けて、各都道府県で地域医療構想を作りなさいということなんです。やはり、都道府県で状況は全く違うので画一的に考えるのは無理ですよね。それを考えるというのが地域医療構想です。ただ2025年が医療需要のピークではなく、2035年くらいがピークになるんです。今後高齢化が進んで高齢者の方が多くなりますが、やはり高齢者の方の方が病気になる確率は高いので、今後20年くらいはまだまだ提供しないといけない医療の量が増えていくということです。
私たちもできるだけお医者さんにかからないようにした方が本来はいいんですよね。要は病気をしないということですが。
50歳を超えてくると、それまでの生活習慣というのがその人の健康に大きく影響するということがよくわかるんです。しっかりと運動している方、たばこを吸わない方、生活習慣がいい方とそうでない方の差はかなり出ます。
今後の医療を考える上で、我々だけが考えるのではなくて、地域の住民の方々がどれぐらい問題意識を我々と共有をしていただけるかが重要です。限りのある医療資源をどのように使っていくか、住民の方々もある程度考えていただかなければいけないことで、共に考えていこう、そういう努力もしていこうと思っています。
いわゆる病院にかからないためにはどうすればいいかを、お話しする機会がなかなかないのですが、病院に来る前にすることはたくさんあるんです。そういう意味でも下野市とともに歩みたいなと思っています。
佐田院長先生!
この度はしもステの病院特集の取材にご協力いただきありがとうございました!
※上記記事は2018.12に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
自治医科大学附属病院
住所 | 〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1 |
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初診・予約外再診 受付時間 |
8:30~11:00 ※特定の診療科を除く 月 火 水 木 金 |
休診日 | 土~日
祝
本学創立記念日(5月14日)・年末年始(12月29日~1月3日) |
診療科 | 内科、循環器科、消化器科、呼吸器科、神経内科、アレルギー科、リウマチ科、皮膚科、放射線科、精神科、小児科、外科、心臓血管外科、呼吸器外科、形成外科、美容外科、小児外科、脳神経外科、整形外科、産科、婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、眼科、麻酔科、歯科口腔外科、矯正歯科、リハビテーション科、救急科、病理診断科 |
電話(代表) | |
URL | http://www.jichi.ac.jp/hospital/top/ |
備考 | 診療等に関する詳細については、当院ホームページをご確認ください。 |
電車をご利用になる場合
JR宇都宮線「自治医大駅」下車、徒歩15分または接続バスで5分
(東北新幹線を利用の場合は、「東京方面からは小山駅」、「東北方面からは宇都宮駅」で下車し、宇都宮線の普通電車に乗り換え)
お車で来院される場合
国道4号線、新国道4号線で小山市内より約12km、宇都宮市内より約25km